記録という機能

 Youtubeでもご存知のとおり、私けっこう考え込んでしまうタイプなんであります。
 特に冬が近づいて急に寒くなってきたりなんかすると、ああ俺は一体なにをやっているんだろうと。春にはこういう悩みってないですから、気候によって体のバランスが変わり、それで考えることや傾向にまで影響が出ているんだなというのは分かるんですが、まあ人間そういうもんですからね。

 さて、今日は写真の持っている機能について考えてみたいなと思っています。

 我々必ず死ぬ生き物なんであります。過去から未来へつなぐチェーンの輪の一つである我々ひとりひとりの人間が、何の因果かカメラという道具を手に取る幸運に恵まれ、しかもある程度の適性があれば自分の思ったように物事を記録して残す事ができます。

 私なんかの場合は後世に残す、というほど大層な事を考えているわけではありませんが、写真を撮る以上、常にそのあたりについては考えざるを得ません。


 この写真を見てください。「そこに猫がいた」ことは分かりますよね。

 たとえば広角で撮ることで背景を画面に取り込んでおけば、「どういう場所に」が説明で加わります。またそこに写り込むもの、色合い、影の長さなんかで時間を説明したり、より具体的に場所を説明することもできるでしょう。

 写真の機能として、「説明する」っていうのは最大のものです。
 これは絶対に避けて通れないし、そもそも趣味で写真をやらない人からすれば、写真は記録するためだけのものであって、自分が好きなアイドルを記録して自分だけのデータとして保管したいんだな、というような動機は理解されやすいですが、「俺だけの表現をするんだ」というような記録性から少し外れた部分についてはまったく理解してもらえません。

 それは写真の持っている記録するという機能が強烈に皆の頭の中に刻まれているからですよね。

左端がわたし。2008 in Seattle WAですわ。
記念写真って全然撮らないんですが珍しく撮ったんですねえ


 たとえば仕事で製品を撮るなら、その製品がどういう形で、どういう機能を持っているのか、使うとどういう風に良い感じになって気持ちよく生活が送れるのか、みたいな部分を説明することが写真で求められます。

 だから写真を撮るのを仕事にしている人ほど、その写真の説明は足りているか? っていう部分を気にします。

 反面、写真の記録っていう機能は本来的であるしパワーがあり過ぎるせいで、使い方をちょっと間違えるとダサいわけですよ。観光地行ったぜ、イエーイみたいな記念写真、「我々の指す意味での写真」から考えるとダサいでしょ。でも写真の機能としての記録性は100%発揮しているわけで、非常に強いんです。

 だから写真をかっちょ良い感じで見せたい場合……たとえばなんだか難しい概念を扱っているんだよ、と言いたいような場合はあえて説明を減らしたり排除したりします。抽象写真なんて最たるものですよね。


 ストロボでライティングする際に背景を単色にしたりするのも、要は背景の説明をすぱっとやめてしまって、被写体に強制的に目を向けたりする心理効果を狙っている部分もあるんです。たいがい無意識に「じゃあすっきり白背景で行こう」とか言うんですが、考えてみればなぜすっきり見えるか、っていったらそりゃ背景に説明がないからなんですよ。

 大事なのは、記録性を活かすにせよ殺すにせよ、それの度合いを決めるのは撮る人間だし、そういったことを自覚的に、そして明示的にやればやるほど「きちんとした」写真になるのは間違いないということです。なんとなくやっていると大体写真そのものも、写真の持つイメージも「もやーん」とします。

 写真を上手く撮るっていうのは、私が書くのもおこがましいですが(とはいえ私が撮れるの前提でないと話が進まないのでそういう事にさせてもらいますが)、機材を上手く扱うことだと思われがちですが、最終的には構図が上手い人が上手い人です。絵作り。

 たとえば良い環境にいて、良い機材を持っていて美人のモデルさんを高価なライティング機材で撮れる人がいても、構図がダメなら台無し。そういう例はいくらもで目にします。
 私が「この人」って言うとまたいらん敵が増えるのでパスしますが、まあ沢山いるんですよ本当に。この人ボンボンなのかな、って思うだけですが、つまり構図がダメっていうのは逆にいえばどういうことかというと、さっき出た「どの程度説明的であるのか」みたいなパラメーターを認知して明確に設定できないから構図が定まらないんです。


 この辺りに突っ込んでいくと話が終わらなくなってしまうので今日はこんなもんにして、ぼちぼち晩飯を食う事にいたしますが、写真を撮る事はひたすらバランスを取ることです。撮っている人は実感しますよね。

 構図のバランスを考える時に、その構図がどれくらい記録性を持っているのか? どうすれば記録性が増し、どうすれば減るのか? そういった観点から考えてみると上達につながるかもしれません。

 というわけでまた。